□ 薬剤の特徴

 1.ケミカルメディエーター遊離抑制薬(肥満細胞安定薬)

   肥満細胞からのケミカルメディエーター遊離を抑制する薬剤としてクロモグリク酸ナトリウム(DSCG)が1967年に開発されて以来、局所用、経口用の本剤が開発され、市販されている。

  経口ケミカルメディエーター遊離抑制薬の特徴

  ・連用により改善率が上昇する。

  ・効果はマイルドなため臨床効果発現が遅い。

  ・鼻閉にもやや効果がある。

  ・副作用が比較的少ない。

  ・眠気がない。

 

 

 2.第1世代抗ヒスタミン薬

  1940年代からアレルギー治療薬として用いられ、市販の鼻炎用薬剤にも繁用されている。ヒスタミン受容体の競合的拮抗薬であるため、くしゃみ、鼻漏には効果はあるが、鼻閉に対する効果は十分ではない。副作用として、眠気、胃腸障害、口渇、めまい、頭痛などがあり、車を運転する人、危険な作業をする人には注意して投与する。抗コリン作用が強いため、緑内障、前立腺肥大、喘息には禁忌である。

 

 3.第2世代抗ヒスタミン薬

  抗ヒスタミン作用が主作用であるが、他に多彩な抗アレルギー作用があるため、抗ヒスタミン作用をもつ抗アレルギー薬といわれることもある。新しいものほど眠気、抗コリン作用が軽減されている。

  第2世代の抗ヒスタミン薬の特徴(第一世代と比較して)

  ・中枢鎮静、抗コリン作用などの副作用が少ない。

  ・全般改善度はややよい。

  ・鼻閉に対する効果がややよい。

  ・効果がマイルドなため発現が遅く、持続が長い。

  ・連用により改善率が上昇する。

 

 

 4.トロンボキサンA2拮抗薬(抗トロンボキサンA2薬)

  鼻粘膜血管透過性亢進抑制作用などを有し、鼻閉を改善する。また、好酸球湿潤を抑制することで鼻粘膜過敏性を減弱し、くしゃみ、鼻漏に対する効果もある程度認められる。血小板凝集能を抑制するため、抗血小板剤、血栓溶解剤、抗凝固剤との併用に注意する。サリチル酸系製剤、テオフィリンとも相互作用がある。

 

 5.ロイコトリエン拮抗薬(抗ロイコトリエン薬)

  ロイコトリエンの鼻粘膜血管透過性亢進、鼻粘膜浮腫に拮抗することから、鼻粘膜の腫脹抑制により鼻閉を改善する。抗酸球湿潤抑制による過敏性亢進の軽減、ロイコトリエンD4による鼻汁分泌を抑制することにより、くしゃみ、鼻汁にもある程度効果がある。エリスロマイシン、イトラコナゾールなどとの相互作用に注意する。

 

 

 6.Th2サイトカイン阻害薬

  ヘルパーT細胞からのILー4などのサイトカインの放出阻害によるIgE抗体産出制御が主作用とされている。

 

 7.局所ステロイド薬

  局所作用が強く、吸収されにくく、分解も早いため、全身的副作用は少なく、効果は確実である。

  局所ステロイド薬の特徴

  ・効果は強い

  ・効果発現はやや早い

  ・副作用は少ない

  ・鼻アレルギーの3症状に等しく効果がある。

  ・投与部位のみ効果が発現する。  

 

 

 8,全身用ステロイド薬

  局所ステロイド薬では抑制できない重症、最重症、難治例に対してステロイド薬内服を行うことがある。副腎皮質抑制などの副作用を考慮し、短期間の投与にとどめるべきである。デポステロイドの筋注は全身的副作用に注意し、投与前後の検査を怠ってはならない。ときに、副作用(満月様顔貌、皮膚、皮膚付属器障害、月経異常、萎縮などの注射部位障害、副腎皮質機能障害など)が起こるので、この方法は望ましくない。

 

 

 9,α交感神経刺激薬

  鼻粘膜血管の収縮により、鼻閉は一時的に改善される。しかし、連続使用により効果の持続時間は短くなり、反跳的に血管は拡張して、かえって腫脹は増し、使用回数を増すという悪循環に陥る。薬剤性鼻炎の一つであり、治療には局所ステロイド゙薬がよい。したがって、使用は鼻閉の極めて強い場合の短期間に限るべきである。

 

 

 10.抗コリン薬

  水性鼻漏に有効であるが、くしゃみ、鼻閉には効果が期待できない。即効性だが持続時間も短く、1日3〜4回の点鼻が必要である。副作用、習慣性などはごく少ない。

 

 

 11.非特異的変調療法薬

  ヒスタミン加ガンマグロブリン、細菌ワクチン、金製剤などがある。単独使用は少なく、薬効機序も必ずしも明らかではない。

 

 

 12.生物製剤

  ノイロトロピン、アストメジン、MSアンチゲンなどがある。作用機序は不明な点が多く、即効性はない。

 

 

 13.漢方薬

  小青竜湯、葛根湯、小柴胡湯などが用いられるが、小青竜湯のみがプラセボとの比較対照試験が行われ、有効性が証明されている。